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なるべく大型で
・ウミニナ科 3 種 BATILLAIIDAE
(Batillaria属 3 種)
ホソウミニナ
イボウミニナ
ウミニナ
・フトヘナタリ科 6 種 POTAMIDIDAE
(Cerithidea属 3 種、Pirenella属 3 種)
フトヘナタリ
シマヘナタリ
クロヘナタリ
カワアイ
ヘナタリ
ヌノメヘナタリ
ホソウミニナ
Batillaria cumingii
Crosse, H., 1862
該当無し
他のウミニナ2種よりも小型で、特徴が乏しく、若いウミニナと酷似するため識別が困難の場合もあります。外洋に面した干潟に多く生息し、時には先島諸島に生息するクワノミウミニナ同様に岩礁にも生息します。本種の外洋性の影響か干満の差がない日本海側でも生息が多くみられます。
上記の8種と大きく異なる点として、本種は卵を産まず胎生に近い形で繁殖します。従ってベリジャー幼生期間がなく一度沖に流された幼生が干潟に定着する必要が無いため、その場で確実に繁殖することができます。その形態が功を奏してか他のウミニナ類と異なり絶滅のリスクが極めて少ないです。それどころか、現在はアメリカ大陸にも外来種として大繁盛し、現地の在来種であるカシュウヘナタリや、その他のベントス(底棲生物)、藻類などに深刻な影響を及ぼしています。
イボウミニナ
Batillaria zonalis
(Bruguire, J.G., 1792)
絶滅危惧 ⅠⅠ 類
殻口が湾曲することで菱形になるのが特徴です。また、ウミニナ類の中でも特に大型で存在感のある種類に思えます。他のウミニナ属2種と比べて、潮間帯下部に生息します。比較的温暖な海域に生息し、東南アジアなどでは多くの生息地が見られるようです。
しかし、日本では本種の減少が深刻で、殆どの干潟で死殻のみしか採集できないまでに激減しているようです。ウミニナよりも環境変化に弱いようで、開発などによる水質変化、干潟の消失などで今後はさらに数が少なくなるでしょう。
ウミニナ
Batillaria multiformis
(Lischke, C.E., 1869)
準絶滅危惧種
日本では最もメジャーなウミニナ類の一つですが、他の2種と比べて棲息域が狭く海外ではかなりマイナーな種類のようです。内軸(殻口)上部の白いデキモノ(滑層瘤)がかなり大きい点と、全体的に殻がずんぐりしている点で見分けることができます。
東京湾、大阪湾などの比較的都市に近い地域でも生息が確認できる種類ですが、あまりにも開発が進行し、健全な干潟が失われた地域では生息できません。その事からよく環境指標生物の一つとしてあげられます。
フトヘナタリ
Cerithidea rhizophorarum morchii
Adams, A., 1855
準絶滅危惧種
多くの個体が土手の壁面に付着しているのをよく見かける印象です。タマキビのように水に対し強い忌避作用を示し、水に落としてもすぐに水面上に這い出てしまいます。
後述のシマヘナタリは河口脇にみられる葦に強く依存しますが、本種は葦原が無い干潟にも多く見受けられます。しかし、本種も他のウミニナ類(1種を除く)同様にベリジャー幼生の期間があるため、干潟自体が開発などで消滅してしまえば繁殖することはできません。そのため、健全な干潟の無い都市部や工場地帯で本種を見つけることは難しいです。
シマヘナタリ
Cerithidea tonkiniana
Mabille, J., 1887
絶滅危惧 Ⅰ 類
フトヘナタリに酷似しますが、螺肋がみ見られず太い縦肋が目立ちます。
極端に棲息域が狭く数が少ないヌノメヘナタリを除き、恐らく本種が最も絶滅が危惧されている種類です。
クロヘナタリが生息する干潟に見られますが、前者と異なりシマヘナタリは河口干潟上部に繁茂する葦に極端に依存しており、その葦が消滅してしまえば繁栄することはできません。また、クロヘナタリに比べて個体数も少ないことから非常に絶滅のリスクが高い種類となっています。現在残されている本種の生息地は全国でも数えられる程しか残っていません。
クロヘナタリ
Cerithidea largillierti
(Philippi, R.A., 1849)
絶滅危惧 Ⅰ 類
他のヘナタリの仲間とはどこか異なる雰囲気で、殻は黒色で茶色~白色の色帯がみられます。老成するにつれて磨耗が顕著に現れ、なかなか良い個体はみつかりません。そして、殻口老成を何度か繰り返すため、反り返っていない個体が大半で殻口も壊れやすいです。
シマヘナタリ同様にかなり棲息域が少なく絶滅が危惧されています。前者に比べ、エリアごとの個体数はやや多い印象です。カワアイと同様に潮間帯中部から下部に多く生息しています。
カワアイ
Pirenella incisa
(Hombron, J.B. & C.H. Jacquinot, 1848)
絶滅危惧 ⅠⅠ 類
規則正しく螺肋と縦肋が並んだ黒と茶色のヘナタリの仲間で、群生地も多く見受けられます。
ヘナタリ同様に多産地はまだ現存していますが、水質汚染などの影響には弱いようで、都市部などでは殆ど見ることができません。また、泥質も生息には重要で、ヘナタリが泥分率の高い場所と低い場所の双方の干潟で生息するのに対し、本種は泥分率の高い(砂粒の細かいヘドロ状)地帯にしか見られない特徴があります。
ヘナタリ
Pirenella nipponica
Ozawa, T. & D.G. Reid, 2016
準絶滅危惧種
殻口下部の反り返りがとても印象的な比較的ウミニナ類では馴染み深い種類だと思います。近年、ヘナタリ属(Pirenella)が細分化され、新種となった種類でもあります。従来ヘナタリとされていた種類Pirenella cingulata(ミナミヘナタリ)はフィリピン以南に広く分布するタイプの学名となりました。
今でも多くの地域の河口干潟で大量にみられる種類ですが、地域によって生息数が極端に異なるようです。瀬戸内海の隣合わせの岡山県と広島県を例にすると、岡山県では3つほどの小さな個体群がみられるのみなのに対し、広島県では福山市の松永湾等の広大な多産地が存在する等、近場においても極端に違いが現れる場合があります。
ヌノメヘナタリ
Pirenella cancellata
Ozawa, T. & D.G. Reid, 2016
絶滅危惧 Ⅰ 類
一見するとカワアイのようにみえますが、殻口の形状はヘナタリのように反り返ります。大きさは他のヘナタリ科と比べてもかなり小型で、2cm程度の種類です。
日本に生息するヘナタリの仲間では最も珍しい種類で、国内で僅か2箇所しか生息地が確認されていません。沖縄諸島に生息するウミニナ類の稀産種、スエヒロヘナタリ、クワノミウミニナよりも格段に少ない種類です。
1kmの範囲にのみしか個体群がみられず、すぐ隣の干潟も重機による護岸工事(整地)、埋め立てが進行しています。(Google mapは更新されておらず航空写真では埋め立て工事の確認はできません 2022/2/20)新種として発表されてからあまり時間が経っていませんが、日本から完全に絶滅するのも時間の問題かもしれません。
※両方孔ありの死殻採集品です。
ひと昔前は干潟にはこれらの種類で溢れていましたが、護岸工事、埋め立て、干拓などの開発に揉まれ、今や 9 種類中、8 種が絶滅危惧種に指定されてしまいました。
特にシマヘナタリ、クロヘナタリ、ヌノメヘナタリの 3 種はレッドリストの中でも特に絶滅の危機に瀕するとされる絶滅危惧 Ⅰ 類に指定されており、近い将来日本で二度と見られなくなるかもしれません。
※棲息環境が同様に河口干潟であるコゲツノブエもウミニナ類の括りにに含まれることが多いですが、オニノツノガイ科に分類されるため今回は除外しております。
産地は落札者以外非公開です。
全種ラベル同封致します。